『他者と働く』を読んだ感想

この記事は「2024年の"推し"本 Advent Calendar 2024」の16日目の記事です。

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『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』が普遍的にオススメできると感じたので、感想を書きつつ推します。

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マネージャーとして仕事をしていると「なんで伝わらないんだろう」、「なんでわかってくれないんだろう」と思ってしまうことがどうしてもあります。

よくよく考えるとそれは当たり前のことで、今までの経験も大切にしている価値観もそれぞれ違います。そして、違うからこそ良い成果が生まれることもあります。

この違いに寄り添ってコミュニケーションを取る技術の解説書が、この『他者と働く』です。

個人の考えや意見の違いとは何か

本書では違いの背景、理由を「ナラティブ」という言葉で表しています。「ナラティブ」はフランス語で「物語」や「言説」を意味する言葉です。本書での「ナラティブ」は一般的な「物語」の意味とは異なり、バックストーリーのような意味で使われています。

つまり意見の違いは立ち位置や信念の違いによるものであり、善悪の問題ではないということですね。

このあたりは「ハンロンの剃刀」の警句に繋がります。

無能で十分説明されることに悪意を見出すな

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意見の違いの中で幸せな未来を描くために

意見が違うまま進行すると、どちらかが「思った通りに進まない」状態になりストレスを抱えます。そのような状態にならないために本書では次のように整理して解決策を示しています。

意見が違う状態(適用課題)の区分

  1. 対立型
  2. 回避型
  3. ギャップ型
  4. 抑圧型

解消するための4つのプロセス

  1. 準備
  2. 観察
  3. 解釈
  4. 介入

課題の区分で照準を合わせプロセスに沿って双方が幸せになる案を模索していきます。

解消のための4つのプロセスはPDCAサイクルのように、課題の解決に至らなければ繰り返されるものです。

正直に言うと最初に読んだときは「まぁそうだよな」や「そんなことわかっているわ」という感想でした。

とはいえ、自分の行いや考えを振り返ってみると「できていない」と感じることが多くありました。

なぜできていないか深堀りしていくと、解決のためのフレームワークが足りていなかったように感じます。

私は課題があり意見の対立のある状態で、相手の立ち位置からの発言だというところまでわかっていながら論で抑え込むようなコミュニケーションを取ることがありました。

これまでこのコミュニケーションに課題意識を持ちつつも、「とはいえ私の"ナラティブ"もある」と半ば解決を諦めていました。

まとめ

本書を通して、互いの「ナラティブ」の衝突や忖度を乗り越えるためのフレームワークを学び、「他者と働く」際の相手の領域への踏み込み方を改めて考えさせられました。

エンジニアはなんだかんだ言って"コミュニケーションを取って"、ユーザーの課題を解決することがミッションです。そしてエンジニアとユーザーという異なる属性が協力して進める関係上、どうしてもナラティブの問題にぶつかります。

本書はエンジニアとして働く上でのコミュニケーションについて重要な示唆を与えてくれます。興味が出たらぜひ読んでみてください。