私が主催する、東葛.devのオフラインイベントでCosense(旧:Scrapbox)を使ってみたので感想を共有します。
同じようにコミュニティ活動を行っている方の参考になればと思います。
前置きが長いので感想だけ見せろ、という人は「Cosenseを使ってみたら、コミュニケーションがこう変わった」から読んでいただければと思います。
実際のCosenseプロジェクトはこちらになります。
そして、当日の交流会で使っていたページはこちら。
- 東葛.devとは?— 千葉発の技術コミュニティが大切にする価値観
- Cosenseとは?—「同時編集」で知識がつながる共創ナレッジツール
- なぜCosenseを選んだのか?— コミュニケーションの課題と新たな挑戦
- Cosenseを使ってみたら、コミュニケーションがこう変わった
- 今後の展望:さらに良いコミュニケーションを目指して
- おまけ:コミュニティ向けCosense設定周りの注意
- おわりに:Cosenseを使ってみた感想まとめ
- 追伸
東葛.devとは?— 千葉発の技術コミュニティが大切にする価値観
東葛.devは千葉県の北西部に位置する松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市あたりの技術者コミュニティです。
🔻connpass🔻
toukatsu.connpass.com
🔻Cosense🔻
scrapbox.io
コミュニティの発足経緯やスタンスの詳細は他の記事を見てもらえると嬉しいです。
ざっくりと次のような方針を取っています。
- 可能な限り場の提供に留める
- 運営側としてコンテンツ提供をしない
- 地域ITコミュニティとして交流を積極的に行う
- 勝手に飲みに行く友人を作って欲しい
まとめると、会話をすることを意識した設計にしており、逆に言えば、「一方的に話して終わりしない」ように考えています。
また地域コミュニティは日常の延長と考えているので、Discordサーバーを用意して日頃の技術研鑽、疑問から地域情報まで雑談できる場を設けています。
Cosenseとは?—「同時編集」で知識がつながる共創ナレッジツール
Cosenseはみんなで知識を書いていくメモツールです。
他のツールにない大きな特徴として、単語単位のリンクをネットワークのように張り巡らせることができます。それにより、記事の検索性が高く保たれます。
検索性が高く保たれるメリットとして、Cosenseでは階層構造を作りません。結果として、「何か書きたいけど、どこに書けば良いかわからない」ということがなくなり、記事を作るハードルが極端に下がります。
とりあえず記事を作って単語を書いていけばまとまるのですから、個人でもグループでもメモツールとしてとても便利です。
また共同編集が可能なこともメリットの1つです。これにより、東葛.devのようなコミュニティでの運用も可能となります。
東葛.devのような非営利での利用では無料で使うことができるのも大きなポイントです。
なぜCosenseを選んだのか?— コミュニケーションの課題と新たな挑戦
東葛.devではこれまで、4回程度オフラインでの交流会を実施してきました。
その中で次のような課題を抱えました。
- 「議論が一時的に終わるのがもったいない」
- 「情報が分散してしまい、後から追いにくい」
このあたりの課題を解決できるかもと思って導入したのがCosenseでした。
これまでの交流会では、参加者が自主的にTwitter(X)やDiscordに感想を書き込んでいました。
ただ、その感想はどの文脈でのものかが、分かりづらかったです。
これは参加者の文章の問題ではなく、TwitterやDiscordがそういう仕組みではないというだけの話です。 情報がどんどん流れていくツールでは、「区切り線」を引けないため、話題の特定が難しいのです。
情報には「フロー情報」と「ストック情報」という区別があります。
Twitterへの投稿はフロー情報で会話と同様、短時間のコミュニケーションの側面が大きいです。対してWikiやDocsにまとめる情報はストック情報と呼ばれ、あとから見ることを主目的に作成されます。
運営としてはコストをかけずに良い塩梅で両立することを目指して、Cosenseを選択しました。
共同編集中は「フロー情報」として記載しているものが、勝手に「ストック情報」としてリンクされ、整理されているという体験はCosense以外だとなかなか難しいのではないかと考えています。
Cosense以外の候補との比較
今回Cosenseの導入前にいくつか他のツールも検討しました。
候補リスト
まず有力だったのはTwitterを使ったこれまで通りのコミュニケーションです。しかし、問題点は前述の通りですので一旦保留としました。
次にDiscordを使ったものです。東葛.devでは日頃のコミュニケーション用にDiscordサーバーを用意しているため、それを使おうというアイディアです。
ここで課題になるのが、フロー情報として見るかストック情報として見るかという点です。
スレッドに書く場合はあとから見返すことのないフロー情報の側面が非常に強くなります。 一方でチャンネルを個別に作成する場合、一定のストック情報としての価値を残す形になります。
しかしながら、仮に交流会が50回まで続いたとして、50チャンネルあると邪魔な気がします。かといってアーカイブしてしまうとストック情報としての価値が一気に薄れてしまうという歯がゆさがあります。これらの理由によりDiscordは候補から外しました。
最後にesaです。これは私から提案したので(個人的に)けっこう有力でした。
esaは、今回の利用では絶対に欲しい共同編集機能を備えたドキュメントツールです。
esaは有料ツールですが、技術コミュニティであれば申請の上で無償提供いただけます。
今回見送った背景は2つありますが、どれも決定的なものではありません。Cosenseの運用で何か課題があれば乗り換える可能性も多分にあると考えています。
見送った背景としては、階層構造を作ることへの懸念とesaを知っている人が少なかったから、というところがあります。
コミュニティなので、みんなに書いてもらいたいです。そのため書き出すハードルが低いツールを選びたかったというところがあります。
Cosenseを使ってみたら、コミュニケーションがこう変わった
ここからは実際に交流会でCosenseを使ってみての感想をまとめていきます。
使ったのは今回が初めてであるためけっこう試行錯誤な面がありました。
Twitterに実況していたときと具体的に変わったな、と思ったところはコメントに対して明確にレスがあることです。
Twitterでやっていたときはリプライや引用リツイートでの対応となり、メンションが飛ぶこともありちょっと避けがちでした。
一方Cosenseではレスに対するハードルが下がり、参加者同士の交流が活発になったのはないかと思います。
メリット:活動がより活発になった
前述の通り、参加者同士の交流が活発になった面はあります。それだけでなく全体的な投稿量も増えていたように感じます。それは次のような連鎖によって起こった変化です。
- 「誰かが編集する(コメントを書く)と、新たな議題が生まれる」
- 発表中でも脱線して別の議題をストックできるようになった
- 結果として「オフラインとオンラインの融合が進んだ」
LTの終了後にはCosenseでの話題を確認し、そこから拾って議論を深めていました。
このあたりはイベント設計である通りのことが実現できたと思います。
LTで話された内容をもとにIRTやOSTを実施するようなイメージです。
当日のCosenseを見るとわかるのですが、各自がけっこう自由に書いている様子が伝わるかと思います。
課題:画面を見る時間が増えた
一方で課題もありました。 それは、せっかくのオフラインでの交流会なのに画面に向かっている時間が増えてしまったことです。 対話できる環境があるのに、文章でのコミュニケーション優位になってしまったのはイベントの設計上もったいないです。
また、結局区切り線がうまく引けなかったということもあります。いろいろコメントしてもらっていたのですが、非参加者にとってなんの話題についてのコメントか、わかりにくい状態のドキュメントになってしまったかと思います。
あとはCosenseの記法にまだ慣れておらず難しいと感じる人もいるようでした。
他にもどうしようもないところとして、「東葛.dev自体の露出が減る」という側面があります。
多くの人にコミュニティを知ってもらわないと参加者が固定化されてしまいます。Twitterでハッシュタグを使って実況する場合、そこで拡散してもらえたのですが、Cosenseでは難しいので、そこが大きな課題です。
今後の展望:さらに良いコミュニケーションを目指して
よかった面、改善したい面が浮き彫りになりましたが、参加者にヒアリングしたところ、全員が「次回も使いたい」と回答してくれました。
試験的な導入というところで試行錯誤して続けていきます。
まず手始めに次回の交流会に向けて「イベント利用時のガイドライン」を作りました。
無数にあるCosenseの記法から覚えてほしいものを絞り、コメントを書くときにやって欲しいことを明記しました。
これにより、「Cosenseの記法が難しい」という課題や、「区切り線がうまく引けなかった」という課題にある程度は対処できるのではないかと思います。
解決できていない課題としては、Cosenseの記載に集中してしまうという点ですが、ここはある程度割り切っていこうかと思います。
交流会の中で参加者から「Cosenseを映し続けるプロジェクタがあるとLTをやっている人もCosenseでのコメントが見えて良いのではないか」というフィードバックを受けたので、こちらも実現に向けて調整していきたいです。
おまけ:コミュニティ向けCosense設定周りの注意
最後におまけとして、コミュニティでCosenseを使うときの設定関連で注意事項を記載しておきます。
気になったのは次の3つです。
- 公開設定が悩ましい
- 編集権限を渡すと他の人のメールアドレスが見えてしまう
- 慣れている人がいないと最初戸惑うかも
公開設定が悩ましい:非公開にするか全体公開にするか
Cosenseの公開設定は全体単位でしか設定できません。このページはメンバーだけ、このページは誰でも見れて良い、みたいな設定がありません。
そのため、コミュニティでの使い方によって設定をどちらかに決めないといけないです。
東葛.devでは、誰でも見られる全体公開の設定です。 地域エンジニアへの還元という意味もあり、クローズドで終わらせるのはもったないと考えたためです。
編集権限を渡すと他の人のメールアドレスが見えてしまう
編集権限はメンバーに対して付与されます。メンバーリストにメールアドレスの表示があるため、他のメンバーにメールアドレスがわかってしまうデメリットがあります。
東葛.devではCosenseメンバー加入時の説明にメールアドレスがほかのメンバーにわかってしまうことを記載し、確認の上参加してもらうようにしています。
慣れている人がいないと最初戸惑うかも:独特の記法と考え方
単にWikiのページを作るのとは少し勝手が違う部分があります。
1つ目は記法です。3つだけ覚えてもらえばあとはなんとかなるかなって思っているので紹介します。
- スペースで箇条書きになる
Ctrl + i
で自分のiconが出る- 自分のページを事前に作ってiconを設定しておく
- それっぽい単語は
[]
で囲ってリンクにしておく- リンク先がなくても良い
2つ目は考え方です。リンクを作って検索性を高めるので、あらかじめリンクを設定しておいたほうが便利なのですが、「本当にリンク作っていいの?」と考えがちです。
そこの心理的な障壁を下げるために、地域グルメ情報やジョークページなどをいくつか事前に作って、雰囲気を和らげていました。効果があったかは不明です。
おわりに:Cosenseを使ってみた感想まとめ
結論から言えば、とても楽しく交流会を開催できたと思います。
これはCosenseの思想と東葛.devの思想の親和性の高さもあって成り立っているものもあり、すべてのイベントでの適用は難しいとは感じます。
しかしながら、小規模なイベントでの体験としてはとても良く、共同編集で様々なものがリンクされていくのは、技術者として面白いです。
ぜひ、コミュニティでのCosense利用を試していただければと思います。
追伸
Cosense運用にあたり、アドバイスをいただいたhonchangさん、東葛.devのみなさん、ありがとうございました。