以前、カンファレンス参加について記事を書きましたが、少し無責任に感じたので、参加する際に考えたほうが良さそうなことをまとめます。
🔻元の記事
hk-it.hatenablog.com
カンファレンスに参加するうえで注意しないといけないこと
私たちはカンファレンスに行ったらついつい全能感、満足感に包まれてしまいます。自己効力感にはなるため、完全な悪ではありませんが、もったいないです!
そこで得た知識を定着、実践していくために学んだことを消化していく必要があります。
知識を"得る"とか知見を"得る"とかはgetなので、それだけでは副作用はないですよね?getして変数に置いたら使わないとLinterに怒られてしまいます。
満足感で終わらないための処方箋
脳内Linterに怒られたら、あるいは怒られる前にどうしていくかを一旦、列挙していきます。
- 情報の取捨選択をする
- アウトプットにつなげる
- 参加理由を深堀りする
なぜ知識を定着まで至れないのか
知識を定着まで至れずに「満足感」で終わってしまう原因はいくつかあります。
- 一時的な情報過多による混乱
- メモや資料だけで満足してしまう
それぞれもう少し詳しくみたあと、処方箋の話に戻っていきます。
一時的な情報過多による混乱
勉強会やカンファレンスは短くて1時間程度、長いと数日に及ぶこともあります。
その間、新しい話や自分とは価値観の違う話を聞き続けることになります。「偶発的計画性理論」的には良いことなのですが、人間は選択肢が多いと選ぶことが難しくなります。
これを「ジャムの法則」や「決定回避の法則」と言うらしいです。勉強会参加後もこの法則に陥りがちです。
このジャムの法則によると、選択肢は多くても6つが限界と言われ、最近では4つくらいと言う話も出ているみたいです。 そのため、カンファレンスに参加したあとに勉強し直す必要があるチャレンジングなセッションは、多く聞いても定着のための学習が難しくなるかもしれません。
メモや資料だけで満足してしまう
勉強会に参加してメモを取るのは非常に良いことだと思います。
ただ、聞いた内容をメモるだけだと、なかなかその後の学習に繋げづらいです。
20分で記憶は42%失われるといいます(エビングハウスの忘却曲線)。カンファレンスや勉強会で得た情報を定着させるためには振り返りが必要です。より良い振り返りができるように、2つの観点でメモを書いていくと良さそうです。
- 調べるきっかけになるキーワードを書く
- 疑問を書く
- 感情を書く
共通点としてはメモを取ることで覚えようとせず、後日の学びを促進させる項目を記載する点です。
振り返りをするための準備
次の3点を「満足感で終わらないための処方箋」として紹介しました。
- 情報の取捨選択をする
- アウトプットにつなげる
- 参加理由を深堀りする
しかし、「なぜ知識を定着まで至れないのか」で記載した通り、カンファレンス、勉強会後に振り返りができないことが、「満足感」で終わってしまっている背景となります。 これは、いわゆる積読状態であり、書籍購入のコストだけがかかっている、もったいない状態です。少しでもこの状態に陥らないために、3つの処方箋を順に見ていきます。
情報の取捨選択をする
カンファレンスに参加すると「せっかくだから」とすべての時間をセッションで埋めたくなってしまいます。私もそうです。あまり関係ない話ですが、食べ放題に行くといつも食べすぎて帰るときに「苦しい......」ってうめいています。
参加することは良いことですし、全くためにならないということはありません。一方で深く理解しようとするには時間が足りなくなることが多いです。
対策として、いくつかの時間は近くのカフェに行ったり、スポンサーブースで話を聞いてみたり、他の参加者と駄弁ったりと、意図的に休憩する時間を入れるのが良いと考えています。
そのために必要なことはセッションの優先順位付けです。私は自身のスキルレベルと興味の2軸で点数をつけていく方法をとっています。
まず、セッションの内容に対する興味の度合いを1~3で評価します(ここでは3が興味度合いが高いとします)。
次に一旦1は切り捨てて、2~3で評価したセッションについて、自身のスキルレベルに対して、80%くらいわかっていそうだと考えられる「復習、補強セッション」、50%くらいだと考えられる「知見セッション」、20%くらいしか知らなそうな「チャレンジセッション」に分類します。
そして「チャレンジセッション」は1, 2個に留めるようにします。そうすることにより、終わったあとに次にやることで迷うことが減ります。
初学者がカンファレンスに参加する際には、わからないことも多く、難しいですが、少しでも理解のあるものから選択していったほうが良いと思います。初学者に関してはわからないものは一旦わからないと諦めて、後日の定着はさせずに脳内の索引にだけ知識を登録しておくのも手です。
アウトプットにつなげる
学びに関してはインプット3に対してアウトプット7が黄金比だと言われています。カンファレンスはどうしてもインプット過多になりますので、細かくアウトプットできるように準備しておくことが大切です。
まず、ここで言うアウトプットは大層なものではなく、聞いたことを話したり、まとめたりというレベルを含んでいます。
実際にはカンファレンス内で、情報の鮮度が高いうちにアウトプットを増やすことを目指すことが良いと思います。手っ取り早くできることを次に例示します。1~3はカンファレンス中、4~5はカンファレンス後のアクションになります。
- カンファレンス/勉強会中の雑談、感想トーク
- Ask the Speaker
- 懇親会
- 感想ブログ
- 身内での共有会
カンファレンス/勉強会中の雑談、感想トーク
カンファレンス/勉強会中の雑談、感想トークをすることで、簡易的にアウトプットを実現します。友人を誘って参加して都度、感想を会話するのが最も単純です。
「感想トークが本当にアウトプットなの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、感想には「わかったこと」「わからなかったこと」「疑問に思ったこと」を整理し、相手に共有することが求められます。そこで相手のもっている知識と合わせることで新たな知見が得られたり、より理解が深まることもあると思います。
Ask the Speaker
カンファレンスによっては登壇者に直接質問できる機会が設けられており、これを「Ask the Speaker」と言います。
質問するためには登壇時に話していた内容を自分なりに解釈して、「わからなかったこと」を明確にする必要があります。
懇親会
懇親会がある場合、そこで「雑談、感想トーク」を実践するのも良いでしょう。人によっては「カンファレンスの本番は懇親会」という人もいるくらい濃い話ができます。
自分の実体験に紐づけてセッション内容を咀嚼し、アウトプットできると良いですね。
感想ブログ
ITイベントのアウトプットの定番です。ただ「楽しかった」や「よかった」ではなく、なぜ「楽しかったのか」や「わからなかった点はどこだったか」など、自分の感情の理由を含めた感想ブログを書くと良いです。
後日に感想ブログを自分で見返すことによって、勉強のきっかけを掴むことができますし、なぜを深堀りすることによって、セッションを改めて思い返すことになります。
身内での共有会
自分の所属する組織にセッションで学んだ内容を持ち帰ります。 セッションの内容をただ再現するのではなく、自分の言葉でまとめることによって、知識が定着していきます。
参加理由を深堀りする
「参加は気軽に、参加理由は突き詰めて」が大切だと思っています。 「情報の取捨選択をする」にも繋がりますが、せっかく参加するなら、「最低限これは持ち帰ろう」や「これは達成しよう」というものを設定してから参加したほうが、後日の優先順位付けがブレなくなります。
また何を目的とするかを考える際に、自分の知識の棚卸しや自分のなりたいキャリアプランについて考えることに繋がります。考えた結果、最初に聞きたいと思っていたセッションとは別のセッションが魅力的に見えることもあります。
実際にセッションを聞いて新しいものに大量に触れると、そちらのほうが魅力に見えてしまいがちです。しかし、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざが示す通り、1個ずつ確実に積み上げていくことが重要です。
『世界一流エンジニアの思考法*1』にも「いかにやることを減らすか?」や「1つだけピックアップする」ことの重要性が記載されています。
まとめ
言いたかったことは次の3点です。
- カンファレンスに参加するときには焦点を絞ろう
- 無理に詰め込みすぎないようにしよう
- アウトプットもしよう
- 出来る範囲で構わないから♪
散々書きましたが、カンファレンスは良いもので、私も大好きです。 とはいえせっかくなら身になるように参加してもらえると良いなと、考えていることをまとめました。
*1:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784163917689 著者:牛尾 剛 文藝春秋 2023年