2つの幸せスパイラルと私が目指すもの

知り合いのエンジニアと雑談していて感じたことを言語化します。

この記事で言いたいこと

  • 自分に自信を持つこと
  • 自信を持つに当たって取捨選択をすること
  • 取捨選択は悪ではないこと

壮大な前フリ

きっかけとなったエピソード

いろんなエンジニアと話して、自分のスキルに自信のないエンジニアが多いなというのを感じました。 具体的には「〇〇さん(テックリード)ほどの知識をつけられる気がしないから自分はスペシャリストにはなれない」であるとか、「転職するには相応のスキルが必要で、自分にはそれが足りない気がする」であるとかそういうのです。

個々の自認が正しいかは別として、選択肢を狭めるのはけっこうもったいない気がしてなりません。そもそも「共感」を求めただけの発言だったかもしれませんが、一旦考えないことにします。

感じたもったいなさの正体は何か

前述の会話で話題に上がった「テックリードの〇〇さん」は当然ながら全知全能の神ではなく、すべてのスキルが完璧なわけではありません。 理想のスペシャリスト像を「テックリードの〇〇さん」に合わせるのは良いと思いますが、スペシャリストに必要なスキルは「テックリードの〇〇さん」のスキルセットであるというのは違います。 そして、その「テックリードの〇〇さん」もスキル不足の期間があったはずです。また、スペシャリストという位置に立って、見えてきたものもあるはずです。

言い換えれば、スペシャリストになった時点での「テックリードの〇〇さん」のスキルセットのスナップショットは誰にもわかりません。アキレスと亀ではありませんが、常に前にいる人と同じレベルにならないと、その役職につけないと考えるのは早計です。

これは本人の目指す方向とずれる話になりますが、組織としては異なる方向性のスペシャリストがいることは歓迎したいことです。あわよくば補い合ってくれとさえ思っています。こうなったときに「〇〇さん(テックリード)ほどの知識をつけられる気がしないから自分はスペシャリストにはなれない」という評価の前提はかなり揺らぐものと思います。

すごい「テックリードの〇〇さん」に対してハロー効果が働いていることも考えられますが、本題からずれるので、ここでは記載しないでおきます。

現実のギャップを埋めるもの

自覚的か無自覚的かはさておき、現実の解像度にギャップがありそうです。 これを埋めるものを何か考えたときに、なんとなく本人の自信のなさ、自己効力感の低さだと思います。

というわけでここからタイトル回収していきます。

2つの幸せスパイラル

幸せスパイラルと聞いて何が浮かびますか?今だと『ぼっち・ざ・ろっく!』のほうが多そうですね。 私は『リトルバスターズ!』が真っ先に浮かぶのですが......。

さて、この2つが何かをおおまかに説明します。

実際の発言内容や解釈はニコニコ大百科をみてください。

dic.nicovideo.jp

『ぼっち・ざ・ろっく!』の幸せスパイラル

廣井きくりという飲んだくれキャラの発言です。様々な不安があっても、「お酒の力で全て忘れれば笑顔になれる。そして、不安を先送りして解決していないため、お酒を求め、お酒でまた笑顔になれる」という「悲しい笑顔の循環」を示しています。以降、「きくりの幸せスパイラル」と記載します。

リトルバスターズ!』の幸せスパイラル

神北小毬という「ほんわりきゅーとなメルヘン少女」の発言です。「他人の幸せを見ると自分も幸せな気分になるから、自分の幸せな様子を見て、他の人も幸せになる。結果としてみんな幸せになるよね」とのこと。「情けは人の為ならず」なのかなと思いつつ、発言だけを切り取ると「巡り巡って」みたいな要素は少ないです。以降、「小毬の幸せスパイラル」と記載します。

2つの幸せスパイラルへのエンジニア的な解釈

「きくりの幸せスパイラル」は「不安の先送り」、「不安の回避」です。エンジニアの業務は常に不確実性≒不安を減らす戦いであると言えます。エンジニアリング領域に限れば笑顔になる方法は、短いイテレートを設定することで、遠い未来(≒高い不確実性)を見据える必要を減らすことが挙げられます。しかしキャリアパスという観点で言えば、「回避」がベストであることはよくあります。とは言っても、すべてから逃げることはできませんし、「逃げないもの」を決めないと何もできなくなってしまいます。そこで「小毬の幸せスパイラル」の話が出てきます。

「小毬の幸せスパイラル」は一見すると他者依存が強いように思えますが、着眼すべきは「自分の幸せが他人の幸せに繋がる」と言い切れる「自己効力感」です。自己効力感とは「自分ならできる」と考えられる感覚のことで、悪い言い方をしてしまえば「根拠のない自信」も含まれます。

エンジニアが成長していく上では、この「自己効力感」が非常に有用だと考えています。先に示した通り、エンジニアリングというものは不確実性への挑戦です。言ってしまえば「誰もわからない」のです。「誰もわからない」ものに挑戦するのに必要なものはなんでしょう?わからないの粒度にもよりますが、わりと「自己効力感」は有力だと思います。 世の中にはやってみないとわからないことも多く、逆に言えばやらないことは大きな機会損失です。そしてやってみるためには「自己効力感」が必要になってきます(他にも「失敗許容力」や「自己肯定感」もあると良さそうです)。

次にエンジニアリングを任せる側の視点に立って考えてみます。仮に事前のスキル情報が十分になかったとして、自信がなさそうなメンバーと自信にあふれているメンバー、どちらに案件を任せるでしょうか? 暴走の危険はありますが、自信にあふれているメンバーを選ぶことが多いのではないかと思います。ベースは「挑戦してくれそう」とか「アイディアを出してくれそう」とか想像上、感覚上の話でしかありません。ただ、それしか根拠がないなら、それに従うしかありません。慎重に物事を考える人、自己評価が低めの人は不満に思うかもしれませんが、世の中わりとそんなものです。

こうして「任されて経験を積む人」と「任されなかった人」のスキル、成功体験、自己効力感の差は開く一方になってしまいます。任された側は正のスパイラルを感じ、任されなかった側は負のスパイラスに陥りやすくなります。

じゃあ何を目指すのか

「任される人になるには自信を持って行動したほうが得だ」というのがここまでのおおまかな話です。 では、どうしたら自信を持って行動できるでしょうか?私は政策としては失敗と言われますが、「集中と選択」が重要だと考えています。

チームメンバーや個人的に面談した人にはよく話していますが、「まずは小さいセグメントでNo1になれ」という話をしています。No1のなり方は強引でも良いと話していて、競争相手は「日本国内」でも「社内」でも「チーム内」でも良いです。領域は「Java」などの大きな領域でも、「JavaのDateTimeAPIの使い方」という小さな領域でも、もっと言えば「JavaとReactを使ったモダンSPAシステムの設計」みたいな複数領域の組み合わせでも良いです。 まずは自分の得意領域を自覚します。そして、近い領域に自信をもってあたれる準備をします。事前にNo1であることがわかっている領域なら、他の人がやるよりうまくできる!って思えますよね。 と、言っても100%得意領域に合致する案件があるとは限りません。そのために周辺の学習は怠らないように声掛けをしています。

もちろん私自身も得意領域を見つけて、その領域では誰にも負けないと自負できるように研鑽と領域の拡大を進めています。

まとめ

自信を持つために得意領域を見つけて、その周辺を集中して学習する。結果として任されることが増えて自信が増すというスパイラルの話でした。

もちろん、キャリアパスとしてジェネラリストとして、一人ですべてを解決し、貢献していきたいという方にオススメする話ではありません。 キャリアに閉塞感をもったときに思い返してもらえればと思います。